The Sensational
ALEX HARVEY BAND


ザ・センセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドについては『レアなこの一枚』コーナーにおいて、アルバム
‘NEXT’を紹介したが、その他彼らは優れたアルバムを多く発表しているのでここに紹介しようと思う。
彼らの魅力を改めてここで言うと、ステージにおける唯一無比のパーフォーマンスにあると思うのだが、今とな
ってはもはや見ることは出来ないのでライヴ・アルバムやライヴの写真を眺めながらの想像上で語る他に無い
のが甚だ至極残念である。
また、‘中古盤漁りの鬼’と異名を取った私が一枚も彼らのアルバムを見つけられなかったのは、それを手にし
た者がその魅力に獲り付かれ二度とそのアルバムを手放すことが無かった証拠であるかもしれなく、輸入盤で
しか手に入らない事は少し残念でならない。
『レアなこの一枚』でも彼、アレックス・ハーヴェイのキャリアについて触れたが、今一度ここで紹介すると、1935
年にスコットランドのグラスゴーで生まれ1972年にティアー・ガス(Tear Gas)というバンドと出会い、メンバーと
意気投合して両者が合体してS・A・H・Bの結成となったらしい。時に1972年というから、すでにアレックス・ハー
ヴェイは37歳になってからデビューした計算になるのだ!?1982年に心臓麻痺で亡くなっているが、その特異な
キャラクターはユニークそのものであり、ブリティッシュ・ロック特有のセンス・オブ・ユーモアに富んだ彼らの何
枚かのアルバムを紹介したい。元‘すかんち’のローリー寺西も絶賛してます。



Framed

(1973)
オドロオドロしいイントロに乗って‘Framed’の重いブギーのメロディーが始まった途端、貴方はきっと
アレックス・ハーヴェイ・バンドの独特の世界に引きずり込まれてしまうだろう。しかしそれはホンの
序曲に過ぎない。退廃的なサウンドを具現化したような‘Midnight Moses’はザル・クレミンンソンの
ギターリフが目茶カッコ良いナンバーだし、3曲の小曲で構成される‘Isobel Goudie’では彼ら特有の
ドラマティックな流れがあるし、全編これウィットに富んだ作品が並び楽しいナンバーが揃う。
スコティッシュ訛り丸出しの楽しいブギー・ナンバー‘Buff's Bar Blues’などの曲が揃い、ブリティッ
シュB級バンドの醍醐味を遺憾無く発揮したデビュー・アルバムと言えよう。
The Impossible Dream

(1974)
3作目のスタジオ・アルバム。いよいよ‘怪傑’アレックス・ハーヴェイ・バンドの本領発揮といった
アルバムで、ステージ上での演劇的要素をレコードといった形でも存分に取り入れることに成功
した。1曲目の‘The Hot City Symphony’は‘Vamvo’‘Man In The Jar’という2曲で構成されて
おり、そのウィットに富んだ曲想は天才と狂気の狭間を行っている。やはり全編これ正体の掴み所の
ないサウンド・曲調のものが揃い、並のハード・ロックじゃない。人を食ったようなメロディー、小馬鹿に
したようなコーラス、ドン・キホーテを地で行くハーヴェイのヴォーカル・スタイルは虜になったらもは
や逃れられない。笑ってしまうボードビル調の‘Sergeant Fury’やハード・ブギーからノスタルジック
なメロディーへと転調する‘Money Honey〜ImpossibleDream’、トラディショナルな曲調を帯びた哀愁
感漂う名曲‘Anthem’(ZALのギターが素晴らしい!)など、どれもがキッチュでワン・アンド・オンリー
な名曲が揃う。
Tomorrow Belongs
To Me

(1975)
前作と比べると幾分ハードな曲が揃う4作目で、ここではトータル・コンセプト・アルバム作りに挑戦
している。相変わらずの人を食ったような作品が並んでいて嬉しくなってしまう。言ってみれば、こ
の時期、色んなバンドが作ったようなロック・オペラという事になるのか。きっと英語が堪能ならば10倍
は楽しめるのだろうが、何分我輩英語力に乏しいのでその点では残念だが、それを差し引いても充分
楽しめるアルバムには違いない。冒頭の‘Action Strasse’における中近東を想像させるようなメロ
ディーとチープな女性ヴォーカルが早くも只のハード・ロック・アルバムでないことを予感させる。ハー
ヴェイの語り口調のヴォーカルが生きたひねりの利いたブルース‘Soul In Chains’、オーケストレー
ションをも導入した7分以上の大作‘The Tale Of The Giant Stoneater’、珍しくアコースティック・サウ
ンドで迫る‘Shake That Thing’や国民的な牧歌とも言うべき‘Tomorrow Belongs To Me’など、楽し
さ満載なアルバムには違いないが、初心者にはこのハイ・センスなヒネリの利いたロックはちょっと
辛いかも。
The Penthouse Tapes

(1976)
全10曲中オリジナルは3曲のみで、あとはカヴァー曲となっている。何と言ってもアルバム冒頭を
飾るオリジナル・ナンバーの‘I Wanna Have You Back’でのキャッチーなギター・リフとハーヴェイ
の‘Oh、Yeah’というアグレッシヴなヴォーカルが素晴らしい。何回聴いても飽きない曲です。デル・
シャノンの名作‘Runaway’や‘Goodnight Irene’(オリジナル知りません)なんかのとぼけた味わいも
これまたこのバンド超一流のアレンジで料理して、贅沢な晩餐会の趣がある。カントリー・タッチの
Say You're Mine’に至っては真面目にプレイしている姿を想像しただけでも笑っちゃいます。アリ
ス・クーパーの‘Schools Out’、オズモンド兄弟の‘Crazy Horses’はハーヴェイ・バンドのハマリ曲。
ラスト・ナンバーの‘Cheek To Cheek’も、それまでのバンドの音楽性からしてもはや狂気の沙汰では
ないかと思わせるような選曲、そしてハーヴェイのなりきりヴォーカルが楽しい。その洒落たセンスは
やはりただのB級バンドでは無いことを証明してくれる。
SAHB Stories

(1976)
ハイ・センスな楽曲はいつものSAHBだが、音の方はちょっと違うかな?それはかなりキーボードが
前面に使われているため、印象が以前とは違うのだ。良いのか悪いのかちょっと判らないが、冒頭の
Dance To Your Daddy’での『移民の歌』を思わせるようなギター・リフ、‘Amos Moses’でのトボケた
ハーモニーに乗った小洒落たブギー、神経を逆撫でするようなクレミンソンのギターが印象的な
Sultan's Choice’などが良い。ちょっと今までと雰囲気が明らかに違う楽曲もあり、新しいサウンドに
も挑戦している傾向もあるが、これはあまり成功とは言い難い。しかし、ハーヴェイのモノクロームは
いつにも増し冴え渡り、サウンド的には一番タイトなアルバムと言える。


オマケ
BBC RADIO 1 LIVE
IN CONCERT

(1972&1973)
彼らのライヴ・アルバムとしては1975年発表のハマースミス・オデオンでの‘LIVE’が有名なのだが、
敢えて私はこちらを紹介したい。選曲は初期2枚のアルバムからが中心となり、一番荒々しくも勢いの
ある演奏が繰り広げられてる時期なだけに小気味良い。個人的なここでのハイライトというと、やはり
2枚目の傑作アルバム‘NEXT’からの‘Gang Bang’‘Teenage Idol’‘Giddie Up A Ding Dong’の3曲と
言うことになってしまう。
何と言ってもスタジオ・バージョンとノリが違うし、ステージ上での彼らのリアルな汗を感じられるナンバー
と言える。その他初期代表曲の‘The Faith Healer’‘Framed’や、スタジオ・アルバム未収録のナンバー
Hole In Your Stocking’、カヴァー曲‘Dance To The Music’でのダイナミックな演奏など聴き所が満載
である。彼らのステージでの演劇がかったパフォーマンスは大きなコンサート・ホールよりはこじんまりと
した劇場クラスの所でのライヴがより一層生きると思う。その点においては、このスタジオ・ライヴもまた
生々しさがダイレクトに伝わってくるライヴだと思う。現在、このアルバムは中々入手困難なものらしいので、
どこかで見かけた折には是非とも入手される事を薦めたい。