BRITISH SWAMP ROCK

前回、アメリカン・ロックの項でスワンプ・ロック・アルバムを紹介したが、今回はそこから
派生したブリティッシュ・スワンプ・ロックを紹介しよう。デラニー&ボニーを中心とした
スワンプ・ロックの波は、自然回帰とも言うべきその音楽及び南部サウンドに憧れた
ブリティッシュ・ロック・ミュージシャンをも飲み込んだのである。デラニー&ボニーの
ツアーに同行したエリック・クラプトンそしてデイヴ・メイソン、またそのエリックと親交の
深かったジョージ・ハリソン、70年代に入って見事に彼ら流の南部サウンドを作り上げ
たローリング・ストーンズ、そしてポール・マッカトニーのウィングスに1枚だけ参加した
ヘンリー・マッカロー在籍のグリース・バンドの5組のアルバムを紹介しよう。



ERIC CLAPTON
(1970)

ERIC CLAPTON
レオン・ラッセルを始め、デラ・ボニのバック・メンバーらが勢揃いしたアルバム。
この時期、‘Layla〜’を発表して、そちらのほうに焦点がいってこのアルバムは
目立たない存在となってしまったが、後まで(もちろん現在も)彼のルーツとなっ
ている作品が多い。実に自然体でレコーディングされたアルバムで全体的にリ
ラックスした曲調のものが多く、クリーム時代の攻撃的なプレイ、サウンドはすっ
かり影を潜め、本当に楽しい仲間たちと一緒に演っている様が伺える。ファンキ
ーな‘Slunky’、牧歌的な美しいメロディーでアコースティック・ギター・サウンド
が心地良い‘Easy Now思わず跳びはねたくなる程リズミカルな‘Bottle Of
Red Wine’、後半のギター・ソロが光る‘Let It Rain’など、どれもが良い!
ALONE TOGETHER
(1970)

DAVE MASON
バック・メンバーは殆ど上記のクラプトンのソロ・アルバムと一緒であるが、ブリ
ティッシュ・トラッドとアメリカ的なゴスペルやカントリーを上手く融合させたサウン
ドが見事である。スワンプ感溢れるロック・ナンバーの‘Only You Know And
I Know’、‘Waitin’On You’やピアノの旋律が美しい‘Sad And Deep As
You’、カントリー・フレイバー漂う‘Just A Song’、伸びやかなギター・ソロが
聴ける‘Look At You Look At Me’など、好ナンバーが揃う。全曲彼自身に
よる曲で固められている。ツウにはたまらない、渋いアルバムだ。
ALL THINGS
MUST PASS
(1970)

GEORGE HARRISON
LP時代には3枚組!10年分の仕事をしてくれました。で、どこがスワンプ?と思
われる向きもありますね。確かに‘My Sweet Lord’や‘What Is Life’は決してス
ワンプでもナンでもありません。いわゆる『ウォール・オブ・サウンド』と言われる
スペクター・サウンドです(フィル・スペクターですよ)。なんか、どれも同じサウンド
に聞こえちゃうところが寂しいですね。決してわるくはないのですが・・・いよいよ
3枚目がスワンプ族(?)大集合のジャム・セッションです。下に紹介したストーン
ズのアルバムと比較的サウンドが似てます。まさにライヴ一発録りな感じがたま
りません。好き嫌いがはっきりと分かれるところですが、このアルバムのレビュ
ーは私にはまだ10年ほど早かったようで、出直して来ます、ハイ。
THE GREASE BAND
&
AMAZING GREASE
(1971&1975)

THE GREASE BAND
ジョー・コッカーのバック・バンドから結成され、これは71年と再結成後の75年に
発表された2枚のアルバムがセットになっている2in1のお徳盤だ。メンバーはヘ
ンリー・マッカロー、ニール・ハバードら。その泥臭いサウンドは‘イギリスのザ・バ
ンド’とも称され、正にブリティッシュ・スワンプ・ロックの代表的なバンドと言える。
1枚目も2枚目もサウンド的には殆ど変わらなく、その根底に流れているものはア
メリカ南部志向のサウンドだ。1枚目では‘Laughed At The Judge’‘Jessie
James’などのジャムっぽい演奏が好きだ。2枚目では多少古い録音も混じって
いるらしいが、そんなことは全然気にならない程の統一感がある。1曲目の‘New
Morning’が始まったとたんに、その一種独特のグルーヴィーなサウンドに引き
ずりこまれてしまうのだ。‘Pont Ardawe Hop’‘Dwoogie’‘Blue Monday
など前作には見られなかったファンキーな味付けをされた曲が、聴いていて心地
良い気分にさせてくれる。スワンプ族(?)必聴盤!
EXILE ON
MAIN ST.
(1972)

THE ROLLING
STONES
当時LP2枚組で発表されたこのアルバムはシングル‘Tumbling Dice’のヒット
を放つも、それほどヒットした印象が無い。ストンーズ・フリークであった私もリア
ル・タイムでこのアルバムを購入したが、今ひとつピンと来なかった。ストレートな
ロックでないことに苛立ちを覚えたものだ。その良さが分かり始めたのは、10年
も経ってからだろうか。当時、嫌いだった曲が好きになり、耳障りだったホーン・セ
クションの音も、むしろその曲には無くてはならないアクセントに思えてきた。
サイケデリックなサウンドを取り入れた‘サタニック・マジェスティック’が60年代の
異色なアルバムとすれば、70年代はまさにこのアルバムと言えよう。しかし最近
になって、ようやく評価されてきたことは、とても嬉しく感じる。一発録りのノリを感
じさせるダイレクトでラフなサウンドは、どのアルバムよりも迫力という点では一番
だし、もともと演奏力で聴かせるバンドでは無かったので、むしろ迫力が増した
アルバムという印象を再認識した。ミック・テイラーの控えめだが光るギター・プ
レイとキースのヘタウマ・バック・コーラスがやたらと目立つアルバムでもある。
Loving Cup’‘Stop Breaking Down’‘Soul Survivor’らの渋いナンバー
での演奏は素晴らしいの一言に尽きる。