CHRIS THOMAS (クリス・トーマス)

クリス・トーマスはビートルズのプロデューサーであまりにも有名なジョージ・マーティンが設立したエア・
スタジオでエンジニア等の仕事をしつつ、ビートルズのホワイト・アルバムにてプロデューサーとしてスタ
ート。以後ロキシー・ミュージックやバッド・カンパニーらの新人バンドらを手がけて、プロデューサーとし
ての地位を築いていった人である。彼のプロデュース・アルバムはあまり持ってはいないのだが、所有し
ている中から5枚をセレクトしてみた。




The Beatles
(1968)

THE BEATLES
ビートルズのオリジナル・アルバムの中では唯一の2枚組アルバム。4人の個性が一番強く現れた
ことでも有名だが、それは前年に全信頼を置いていたマネージャーで5人目のビートルズと言われ
たブライアン・エプスタインの死が大きく関係したのだと思う。クリス・トーマスはエンジニアとして参
加したが、ジョージ・マーティン不在の時は早くもプロデューサーとしてその手腕を発揮し、おまけ
にピアノ等も演奏したとか。ビーチ・ボーイズのパロディ‘Back In The U.S.S.R.’や思わずサビのメ
ロディを口ずさんでしまう‘Ob-La-Di , Ob-La-Da’、エリック・クラプトンの泣きのギターが光る
While My Guitar Gently Weeps’、ピアノの旋律が美しい‘Martha MyDear’ポールのロッカーとし
ての本領発揮といったナンバー‘Birthday’、アルバムの最後を締めくくるにこれ程の曲はないか
も知れないと思わせる‘Good Night’など、どれもが個性豊かな曲揃いだ(もちろんビートルズの
曲に個性の無い曲など一曲もないのだが)。一人で完成させた曲も多いとの事だが、それでもア
ルバムといった形で聴けば、やはりビートルズなのだ。もし私が無人島に持って行きたいアルバ
ムを10枚選べと言われたら、間違い無く持っていくアルバム。
Wish You Were Here
(1974)

BAD FINGER
常に『ビートルズの弟バンド』と言われ続けてきたバッド・フィンガーがアップル・レコードからワー
ナーに移籍しての2作目。ポップな佳曲がそろったアルバムだと思う。一曲目の‘Just A Chance
から切れの良いギター・サウンドが響き渡り、今までにあまり聴かれなかったギター・ソロ・パート
も存分に盛り込まれており、分厚いコーラス・ワークと共に光る一曲と言える。ここからは‘Know
One Knows’(邦題:誰も知らない)がシングル・カットされ、ちょうど渡英中のサデスティック・ミカ
・バンドをクリス・トーマスが同じくプロデュースしていた関係からなのか、ミカの「誰も知らない〜」
というちょっと意味が判らないモノクロームが入ってることでも有名なナンバーだ。他にもビートル
ズ直系の(正確にはポール・マッカートニー直系の)メロディアスなナンバー‘Dennis’など綺麗な
曲が揃う。ピート・ハムの曲ばっかり挙げてしまったが、他の3人も優れたコンポーザーとしての
力量は持っており、個性溢れる曲が揃った名盤と言える。
黒船
(1974)

サディスティック・
ミカ・バンド
確か、当時イギリスでも人気急上昇中のロキシー・ミュージックとツァーを一緒に回っていたの
で、ロキシーの2枚目のアルバムからプロデュースしたクリス・トーマスがプロデュースしたのだ
と思う。何と言ってもグラム・ロックチックな‘タイムマシンにおねがい’が最高です。ミカのヴォー
カルは決して上手いとは言えないかも知れないが、この歌には彼女の声が不可欠なのだ。間奏
の高中のギターもバッチリ決まった本当にいかしたナンバーだ。しかしアルバム全体を聴けば、
この曲だけどちらかと言えば異空間に存在してるような曲で、他はファンキー路線まっしぐらみ
たいな曲揃いである。特に‘何かが海をやってくる’‘黒船’‘よろしくどうぞ’といったインストルメ
ンタルが高中正義、高橋ユキヒロ、小原礼のプレイが最大限に生かされていて好きだ。‘どんたく
なんかもファンキーなノリでメロディーも良く、ウキウキさせてくれる楽しいナンバーだ。イギリス
でも‘BLACK SHIP’のタイトルでリリースされたはずだ。この後、もう一枚ライヴ・アルバムが出
されたと思うのだが、記憶が定かでない。
Never Mind
The Bollocks
(1977)

SEX PISTOLS
一般的にはパンク・ロックの名盤とされるが、私には「パンク」が何であるか良く判らない面も多々
ある。同時期に出た数々のバンドの曲と比べると、明らかにピストルズのそれは違うもののように
思われた。コード進行を淡々と刻む単なるビート・バンドじゃないか。最初はそういう気がした。
Holidays In The Sun’‘God Save The Queen’‘Anarchy In The U. K.’‘Pretty Vacant’などの
シングル・カットされた曲を聴くとホント、ギター・リフがイカシているし、難しいギター・ソロなんか
は一切無くシンプル・イズ・ベストといった感じだ。歌詞の内容がパンク(反社会的)であったのだ
ろうが、音楽のみ純粋に取り上げたらビートの利いたこれこそロックン・ロールだ。元々、ロックン
・ロールとはそういうもの(反社会的)だったはず。そういったR&Rのエネルギーがほとばしる唯一
無比のアルバムと言える。邦題は『勝手にしやがれ !!』
Back To The Egg
(1979)

WINGS
前作までのジミー・マッカロー、ジョー・イングリッシュが脱退して替りのメンバーが加入した後の
一作目であるが、皮肉にもウィングスにとってはラスト・アルバムとなってしまった。このアルバ
ムは発売当時、とかく豪華ゲスト(デイヴ・ギルモア、ピート・タウンゼント、ロニー・レーン、ジョン
・ボーナム等)参加が評判となっていたが、当時の印象はと言えば‘Band On The Run’‘Venus
And Mars’あたりのサウンドと比べると、残念ながらこれといった強い印象は残らなかった。時
が経って聴き返してみると、その豪華メンバーを有しての‘So Glad To See You Here’や‘Baby's
Request’などの楽曲に有り余る程メロディー・メーカーとしての才能が出ているし、‘After The
Ball/Million Miles’‘Winter Rose/Love Awake’といった素朴な味の作品を淡々と歌い上げる
ポール・マッカートニーにも魅力を感じられるのである。これはアレンジの妙であろうか?



Bad Finger