Rick Derringer (リック・デリンジャー)


リック・デリンジャーは1965年にマッコイズというアイドル・バンドで、「Hang On Sloopy」のNo.1
ヒットを生んで一躍注目された。その当時の名前は「Rick Zehringer」だ。しかしその後はさほ
ど売れずにドサ回りを続けていた所、1970年にジョニー・ウィンターのバック・メンバーに抜粋
された時から彼の人生はガラリと変わった。丁度その頃だ、名前を「Derringer」と変えたのは。
以後、エドガーウィンターと共にバンド〜ソロと良質のアルバムをサポート〜プロデュース。
そして自身のソロ〜バンド活動と目まぐるしく走り続け70年代のアメリカン・ロックを牽引して
いったのだった。
70年代初めは殆どブリティッシュ・ロック一辺倒だった私がリック・デリンジャーを初めて知った
のは、1974年のエドガー・ウェインター・グループの「Shock Treatment」(邦題:恐怖のショッ
ク療法)というアルバムで、今までに聴いた事が無かったセンス良いギターを弾いていたのが
ここに紹介するリック・デリンジャーと言う訳だ。
ミュージシャン仲間にも信望は厚く、1981年にはギター類や衣装等一切のステージ機材を積
載したトラックが盗まれてしまい、落ち込んでいた彼を励まそうとミュージシャン仲間が集まり
エイド・ライヴを催したのは実に微笑ましい逸話だ。
今回は単なるアイドルで終わらなかったリック・デリンジャーの70年代のソロ・アルバムにスポ
ットを当てて紹介したい。


All American Boy

(1973)
それまでのキャリアを詰め込んだ自慢のソロ・デビュー作だ。彼の代表作である
Rock And Roll Hoochie Koo」を初め、様々なタイプのナンバーが順序良く並
び、リスナーを存分に楽しませてくれるアルバムだ。参加メンバーにはジョニー・
ウィンター・バンドのボビー・コールドウェル、エドガー・ウィンター、ジョー・ウォル
シュ等が名を連ね、全12曲をあっというまに聴かせてしまう。
そのギターの腕前はもちろんコンポーザーとしても、そしてプロデューサーとして
も遺憾なく手腕を振るったと言えるだろう。インストゥルメンタル・ナンバー「Joy
Ride」でのポップなノリや、思わずニヤリとさせられるカントリーチックな「Cheap
Tequila」を上手く散りばめながら、「Uncomplicated」「Teenage Love Affair」と
言った基本のロックン・ロール路線と「Hold」「It's Raining」と言ったバラッド路線
を軸としたアルバム作りは豪華なパーティーでの晩餐を感じずにはいられまい。
シングル「Rock And Roll Hoochie Koo」23位、アルバムは25位までチャートを
駆け上った。
Spring Fever

(1975)
約6年前にやっとCD化されたアルバム。で、内容としては最初聴いた時はあま
りピンとは来なかったけれど、聴き込むうちにドンドン良くなっていった印象があ
る。何と言ってもこのジャケットは当時の音楽雑誌で見たときは相当インパクト
あった。男にしてこの美貌!しかもギターが上手く曲作りも良いという、当時の
憧れの的だった。で、アルバムの内容は前作同様、ポップでバラエティに富ん
でいる。
彼の代表ナンバーの一つとも言える「Still Alive And Well」もさる事ながら特に
好きなナンバーが飛び切りポップで疾走感ある「Tomorrow」、そして後にリメイ
クもしている最高のバラードチューン「Don't Ever Say Goodbye」だ。
またマッコイズ時代のヒット曲「Hang On Sloopy」をセルフカヴァーしているが、
これもまた何とも可愛らしいギターリフと、レゲエ調のリズムに乗ったコーラスが
実に楽しい。また今回聴き直してみて「He Needs Some Answers」での彼のVo.
のカッコ良さを再認識。もうちょっとギターワークを披露して欲しかったところだが
アルバムの出来映えという点では80点以上のアルバムなので良しとしよう。
ウィンターファミリーの他、変わった所ではデヴィッド・ヨハンセンやチック・コリア
という面子も参加したこのアルバム、出来の良さに反してアルバムチャートは
141位と振るわなかった。
Guitars And Women

(1979)
丁度この時期は自身のバンド“Derringer”と二足のワラジを履いていた頃でバ
ックにはDerringerのメンバーが名を連ね、またこのアルバムをプロデュースした
トッド・ラングレンのバンド“Utopia”のメンバーもいたりして混合バンド的な面持
ちを持っている。またどういう繋がりなのかCheap Trickのリック・ニールセンも2
曲提供したりしている。相変わらずのポップ・チューンが冒頭2曲「Something
Warm」「Guitars And Women」に続き、「Desires Of The Heart」「Timeless」と
展開される中、今までになかったタイプのヘヴィネスなナンバーを散りばめつつ
後半をバラードナンバー「Hopeless Romantic」、前作のリメイク「Don't Ever Say
Goodbye」で締めるところが心憎い作りとなっている。特に「Don't Ever 〜」は
ここでのバージョンのほうが後半の盛り上がりと鳥肌が立つようなデリンジャー
のギター・ソロがあったりして好きだ。
アルバム・チャートにおいてはチャート・インすら出来なかったアルバムだった。
Face To Face

(1980)
遂に80年代に突入!60〜70年頃からのバンドにとって、パンクからニューウェ
ーブ、そしてAOR・産業ロック時代へと流れ、言わばオールド・ウェーブへの風
当たりは厳しく、幾つものバンドが解散へと追い込まれた。果たしてリック・デリ
ンジャーはどうだったのだろうか?
確かに、このアルバムはいつもと多少違う印象を持つ。ポップな味は多少抑え
気味になっているし、彼の持ち味と言える3分のロックン・ロールが姿を消した。
3分と言うのは比ゆだが、言ってみればポップなロックン・ロールということ。
ヘヴィなナンバーが多く、サウンドも70年のそれとは大きく異なってきた。
その中、「Let The Music Play」がいつものデリンジャー風ロックン・ロールで彼
の持ち味が一番出ていると思う。「I Want A Lover」もノスタルジックな感じのロ
ックンロールで楽しいと言えば楽しいのだが。他、「Jump, Jump, Jump」とニー
ル・ヤングのカヴァー「My MY Hey Hey」がライヴ収録。特に後者は迫力あるギ
ター・プレイが光る。
以後、80年代はすっかり鳴りを潜めた感じだったが、90年代に入ると再び精力
的に活動を開始してブルース・アルバムを数枚発表し続けている。
ロックンロール&ポップスの世界にカムバックして欲しいアーティストの一人だ。




( 2008/01/12 UP)