HEART (ハート)


ハートはアンとナンシーの姉妹が中心となってカナダのバンクーバーで結成されたが、二人とも歴然としたアメリカ人
である。私が初めて聴いたのは77年の‘Little Queen’のアルバム中の‘Barracuda’のヒットからであった。まず、パ
ンチの効いたヴォーカルがとても魅力的で、しかも雑誌で見た写真がとても美形の姉妹という事がとても気に入り、す
ぐにレコードを買いに走った。85年発表のセルフ・タイトルのアルバムが大ヒットとなって、押しも押されぬビッグ・ネー
ムの仲間入りを果たした感があるが、私の好きなハートは特に70年代のハートなのである。それまでの屈折10年とも
言うべき時期の中で、70年代のアルバムを紹介したい。



Dreamboat
Annie

(1975)
Magic Man’が全米9位となり、アルバムも7位まで上昇。動と静の曲を交互に上手く使ったアルバム構成
は聴いていて全然飽きることなく、アン・ウィルソンのパンチ溢れるVo.も‘Crazy On You’や‘White Lightning
& Wine’といったナンバーで堪能できる。ただハードなサウンドだけでなくその中にもメロディアスな部分が
あるのが良い。それは更に‘Soul Of The Sea’‘How Deep It Goes’などの幻想的なバラード・タイプの曲
に顕著であり、ちょっとブリティッシュ・トラッドっぽい雰囲気をかもし出していている所がミソ。古くはプログレ
・バンドのルネッサンスのような趣もあったりして、3タイプの異なったアレンジで聴かせるタイトル曲の
DreamboatAnnie’も彼女達の隠れた佳曲と言える。当時の邦題は『ハート宣言』。
Little Queen

(1977)
これが日本では初めて彼女達が紹介され、私ももちろん初めて耳にしたアルバムだ。ツェップリン直系の
ハード・ロック・ナンバー‘Barracuda’は当時やたらラジオから流れまくり嫌が負うでも耳にしたナンバーで
全米11位となる。ジャケットが物語っているように中世の世界に迷い込んだかのような錯覚に陥りそうなメロ
ディを持った曲が多く、当時の私はアルバムとしてはそんなに好きではなかった一枚。バラード・タイプの
曲に魅力的なメロディを持った曲が残念ながら無いためかもしれません。このアルバム制作時期前にレー
ベル移籍のトラブル問題などがあったらしく、十分な準備時間が無かったのかなとも思う次第であります。
全米アルバム・チャート9位。
Magazine

(1977)
確か録音時期はこちらがLittle Queenよりも先だったのが、レーベル移籍のゴタゴタによって3枚目として発
表されたのだと思う。ここでの聞き物はニルソンのカヴァー曲‘Without You’だろう。アンのハイ・トーンのヴ
ォーカルが一段と冴え渡ってるこの曲は、後の様々なバラード・タイプのヒット曲の下地にもなっているよう
にも感じる。タイプ的にはこの時期、やはり1曲目の‘Heartless’のようなハート風ロックン・ロールとでも言っ
たら良いのだろうか、小気味良いロックが好きだった。最後の2曲のみライヴ・テイクとなっていって、ハート
の珍しいR&B、ブルース・ナンバーが聞けるのも貴重だ。このライヴではツェッペリン・フリークの彼女達らし
く‘You Shook Me’をカヴァーしてたりする。アルバム最高位17位。
Dog &
Butterfly

(1978)
1曲目がライヴ・ヴァージョンで始まるという嗜好を凝らしたアルバムとなっていて、レコードではA面をDog
Side、B面をButterfly Sideとしてした。つまりA面はアップ・テンポの曲を、B面はスロー・テンポの曲を集
めたもの。ロッド・ステュアートもこの様なアルバム作りをしていた時期があったっけ。特にB面のスロー・
サイドの4曲はいずれも5分以上の作品であり、聴き応え十分なバラードが並ぶ。アコースティック・ギター
をフィーチャーした幻想的な‘Nada One’と‘Mistral Wind’はオーケストレーションを導入した力作。特に後
者はツェッペリンの影響が強く感じられる。ここからは快活なアップ・テンポの‘Straight On’が15位となり、
アルバムは17位。アルバム発表後にバンド結成時からのギタリスト、ロジャー・フィッシャーが脱退する。
Bebe Le
Strange

(1980)
前年のジャパン・ジャムにて初来日を果した彼女達だが、作品的にはこのアルバムが私は一番好きだ。
それはレッド・ツェッペリンの影響を受けた彼女達の70年代の集大成とも言うべきアルバムだからだ。
前作までのロジャー・フィッシャーの特徴あるギターと比較するとハワード・リースのギターは直線的で
はあるが、ゴチャゴチャと手を加えないギター・フレーズも悪くない。そもそも、それまでのアルバムと比
較するとパワー溢れる大ハード・ロック的な作品が多く、‘Bebe Le Strange’‘Break’‘Even It Up’‘Strane
Night’といった好ナンバーが並ぶ。お世辞にも上手いとは言えないナンシーのVo.が聴ける‘Raised On
You’も彼女のファンにはたまらない曲だ。ここからはシングル・ヒットこそ出なかったものの、アルバムは
チャートを5位まで駆け上った。

Greatest Hits/Live

(1980)
それまでの彼女達のアルバムからヒット曲を中心に9曲とスタジオ未発表曲3曲、それとライヴの6曲か
ら構成されたアルバム。LPでは2枚組となっていたが、CDになってからは3曲もカットされてしまったのが
甚だ残念である。ここでの聞き物は彼女達が敬服して止まないというツェッペリンの‘Rock And Roll’の
カヴァーだ。アン・ウィルソンのVo.は女ロバート・プラントと言っても良いくらい見事な歌いっぷりで、特
に高音部のシャウトが実に素晴らしい。‘Dedicated with all our love to John Bohnham’とクレジットさ
れている所も泣かせます。もう一曲素晴らしいのが‘I'm Down〜Long Tall Sally’のメドレーで、奇しくも
2曲ともポール・マッカートニーがリードVo.をとったナンバーですね。ビートルズとはまた違った荒々しい
ノリノリのロックン・ロール大会に仕上がっていて、聴いていて胸がスカッとします。ハワード・リースの正
統派リード・ギターも良い感じでした。シングル‘Tell It Like It Is’ が8位、アルバムは13位。ここから彼女
達は2枚のアルバムを発表をするも低迷し続け、5年間という長いトンネルに突入してしまうのであった。

シングル、アルバム・チャート順位はビリボード誌による