Jeff Lynne (ジェフ・リン)

ジェフ・リンがプロデューサーとして注目されたのは一体いつ頃からだったろうか?私がプロデューサーとして初めて
意識した作品は1983年のデイヴ・エドモンズの「Information」の中での曲であった。このアルバムで彼がプロデュース
した曲は2曲だけであったが、そのポップなエッセンスは大いに感じとった。以後、あまり彼のプロデュース・アルバム
には触れることがなかったのだが、2000年近くになってから急にそのサウンドが年のせいか妙に馴染んできて、聴い
ていて疲れない軽めのポップ・フィーリングがちょっとしたマイ・ブームになった時期があった(笑)。
音楽誌を読んだりすると必ずと言って良いほど彼がビートルズの遺伝子を組み込まれたアーティストのように書かれ
ていたりするのを目にするが、それは取りも直さず類まれなポップ・フィーリングがビートルズのそれと類似している
ところがあるからなのかも知れない。
そんなジェフ・リンがプロデュースした5枚の素晴らしいアルバムを紹介したい。



A New World Record
(1976)

Electric Light Orchestra
ELOのアルバムではこれが最初に聴いたものだったと思う。それまで確かに幾つかのヒット曲を
耳にしたことはあったとは思うが。ここからは日本のラジオでも「Telephone Line」が良く流れて
いたし、かなりヒットしたんじゃなかったかな。この曲は耳の奥底に残るメロディ・ラインが素晴ら
しいと思った。何回も聴き返さなくても憶えられるメロディだ。「Rockaria」なんてのも個人的には
大好き。もちろんチャック・ベリー的なノリが良いんですが。ちゃっかり「I'm Ready」(ファッツ・ド
ミノ?)もそのまま拝借している、なんてのは後に判ったことだけど。どことなくビートルズっぽい
メロディを持った曲もあるのだが、例えば「So Fine」でのウェスト・コースト的なギターの音色ひ
とつ取っても、それだけのバンドじゃないという事が判る。それとこのバンドの曲に共通している
のが、と言うか、取りもなおざずジェフ・リンのプロデュース曲に共通していることかも知れない
が、ドラムのサウンドが独特なんだよね。これに気付いている人は多いんじゃないかな。
ちょっと乾いた、悪く言っちゃえば面白味に欠けるドラムなんだけど、あのサウンドはこの作風に
は必要なのかも。そう、決してドラムがでしゃばっちゃいけないサウンドなんだろうな。それでい
て、耳に残るリズムを作り出している。これは、ジェフ・リンの作り出したウォール・オブ・サウンド
とも言えるかも。
Riff Raff
(1984)

Dave Edmunds
古くからのデイヴのファンにとっては、あまり評判が良くなかったような評論を目にしたことが
あったけど、私のデイヴとの出会いは意外と遅くって、これの前作だったからそんなに違和感
は無かった。デイヴのロックン・ローラーとしての魂も充分に感じられるし、とってもポップに富
んだ作品が多いので私は結構好きなアルバムです。もちろん当時レコードでも持っていたけど、
このジャケットじゃ無かったよなぁ。どんなだったかは全然思い出せないのだが。10曲中ジェフ
・リンのプロデュースが6曲、残りがデイヴなのだけど結構サウンド的には同じレベルで演奏さ
れていたりするし、デイヴのほうが意外と影響を受けた感じが強い。ここからは「S.O.S.」がスマ
ッシュ・ヒットしたと思ったけど、これはもう典型的なジェフ・リン・サウンドで、聴いていて実に楽
しいナンバー。確かに今まではこういう感じの曲はデイヴのアルバムには無かったよなぁ、など
と思ったりするわけだ。で、最後の2曲、「How I Be So Wrong」でホロリと泣かせて、デイヴの
唯一のオリジナルのコテコテ・ロックンロール「Can't Get Enough」で締めるところが、う〜ん、さ
すが、我らがデイヴ・エドモンズとなってしまうよね。
Cloud 9
(1987)

George Harrison
5年振りのソロ・アルバムとなったこのアルバムだが、私がアルバムとして聴いたのは今年に入
ってからだった。それまではシングルカットされた「Set On You」は耳にしたことがあったが、ジョ
ージも明るい曲調を歌うようになったもんだな、くらいの認識しかなかったのである。思えばジョ
ージのソロとしては70年の終り頃からは何故か殆ど関心が無くなってしまっていたので、丸25
年振り(!?)くらいに聴いたアルバムということになってしまう。それまでの私の中にあったジョー
ジのソロとしてのイメージを良い意味で打破してくれた作品、ということになるだろうか。それほ
ど、ポップで明るい曲調が揃ったアルバムとのイメージが強く残った。「Fish On The Sand
This Is Love」「Devil's Radio」「Wreck Of The Hespers」そして前述の「Set On You」と言った
ナンバーが聴いていて楽しくなるようなロックン・ロール・ナンバーで、その絶妙な配置がこれま
た良いのである。なにせシングル・カットのナンバーがアルバム・ラストに収められているっての
もあまり無いかも。ジョージ独特のメロディとジェフ・リンの作るポップ・センスが上手く融合した
会心の作品であろう。
FUll Moon Fever
(1989)

Tom Petty
ジョージの「Cloud 9」を完成させ、翌年にトラヴェリングウィルベリーズとしてのアルバムを作り
挙げた後にこのアルバムが作られた。だから参加ミュージシャンの名前にはジェフ・リンはもち
ろんジョージやロイ・オービソンの名前が見られる。これはトム・ぺティ名義のソロ・アルバムと
なっているが、ハートブレイカーズとしてのアルバムはそんなには聴いたことが無いので、良く
は判らないのだが、全体的にどことなく70年代っぽいメロディで溢れているところが親しみやす
い感じがした。個人的に好きなナンバーはと言えば「I Won't Back Down」とか。どことなく60年
代っぽい甘いメロディを持ち合わせていながら、コーラス、演奏ともに完璧な3分間ロックン・ロ
ールが実に潔い良いよねぇ。同様に「Runnin' Down A DreamTheApartment Song
Depending On You」「Zombie Zoo」などの曲も楽しさ満載のポップ・フィーリングを感じる訳だ。
それと対を成すように、これまた60年代っぽいフォーク・ソングを歌い上げる姿もやはりトム・ぺ
ティという人の魅力の一つなのだろう。
Armchair Theatre
(1990)

Jeff Lynne
ジョージ、トラヴェリン・ウィルベリーズ、トム・ぺティのソロ、そしてこのアルバム。流れは完全
にジェフ・リン一色になってきた感じだ。と言っても、トラヴェリンのアルバムは持っていません
が。某中古CD屋さんで数ヶ月前に見かけたら4000円近くもしていた。ゲゲ〜ッ!と前置きが長
くなりましたが、このアルバムに収められた曲は全11曲。で、アルバム通して聴いても40分足
らず。この時代に実に貴重なCDである。完璧なるジェフ・リンの作り上げた3分間ワールド。
ジョージが参加していたりもするのだが、ここではもう全くのジェフ・リンの一人舞台。この人は
本当に凄すぎる!これ程、自分のカラーを出し切ったアルバムに出会ったのも、あまり記憶に
ない。この1曲というのが無い代りにどれもが高水準の曲揃いで、どの曲にも共通している点は
聴いていて気分が明るくなるような楽しい曲が揃っているところ。それって、音楽の原点でしょ。
それが良く判っているミュージシャンなのだ、ジェフ・リンは。


2003/12/17Up