HEAVY METAL KIDS (ヘヴィ・メタル・キッズ)


ヘヴィ・メタル・キッズ、彼らのことを憶えている人はそんなには多くはいないだろう。もし、いるとしたら余程のブリティッシュ・
ロック好きな人じゃないのかな。私が彼らのことを最初に知ったのは当時愛読していた『音楽専科』という雑誌にてであった。
ヴォーカルのゲイリー・ホルトンの声はスティーヴ・マリオットに似ていて、そのサウンドはフェイセスのノリがあるというふうに
書かれていたと思う。雑誌ではロンドン(?)の裏路地で撮った彼らのスナップ風の写真が載せられていて、そのふてぶてし
い様子(面構え)に何かを感じてしまった。これはすぐに聴かなくっちゃ、と思ったものの中々聴くチャンスがずっと無かった。
つい一年ちょっと前に彼らの3枚目のアルバムがCD化されているのを発見したのを機に、当時の聴きたいという感情が蘇っ
てきた。そして今回、WEB上の仲間でもあるHINEさんのおかげで、その音をやっと聴く事が出来た。感激の至りである。
彼らが残した3枚のアルバムを紹介しよう。



HEAVY METAL KIDS

(1974)
ゲイリー・ホルトンの声質はどことなくスティーヴ・マリオットに似ていて好きだ。例えば、私の大好きな
ロッド・ステュアートのようでもあるし。でも、そんなことには関係無く、このファースト・アルバムには何
かこの時期にデビューした他のバンドには無い熱いエネルギーを感じてしまう。やっているのは至って
ピュアなロックン・ロールで、1曲目の‘Hangin' On’からして、もうご機嫌なナンバーだ。ピアノでは後に
UFOに加入することになるダニー・ペイロネルも名を連ねている。ギターのミッキー・ウォーラーという
人はこのアルバムだけの参加となってしまっているが、シンプルこの上ないギターは小気味良ささえ
感じてしまうくらいだ。ロックン・ロールには技以上にハートが必要だってことか。ハンブル・パイやフェ
イセスにも似たノリを持ったナンバー‘Always Plenty Of Women’とか、当時シングル・カットされてこ
のアルバムのハイライトにもなっている8分近いナンバー‘Rock'n' Roll Man’がなんともイカシテいて、
聴いていてハートを熱くしてくれる。良い意味でのアマチュアニズムを持ったケレン味のない演奏は好
感が持てたアルバムだ。
ANVIL CHORUS

(1975)
前作とはギタリストが変わってしまったが、相変わらずのシンプルなロックン・ロール・アルバムとなっ
ている。曲によっては多少、女性バック・コーラスが入っていたりもするのだが、このバンドの持ち味
である気取りの無いロックン・ロールにはさほど変わりは無い。‘Hard At The Top’‘Blue Eyed Boy
Old Time Boogie’‘Crisis’などなんの変哲も無いロックン・ロール・ナンバーを、多少なりとも録音技
術に頼ったレコーディングをすることもなく、一発録りで決めました風な演奏がかえって嫌味を感じさ
せない所が良いのである。ダニー・ペイロネルのピアノもちょうどフェイセスに置き換えて言えばイアン
・マクラガンのような働きをしていて、ノリの良さを加速させてくれているってもんだ。
KITSCH

(1977)
ちょっと間を置いての3枚目のアルバムで、彼らのラスト・アルバム。前作とはまた多少メンバー・チェ
ンジがあり、ギターとキーボードが変わった。キーボードには後にフォリナーのアルバムなどをプロデ
ュースするジョン・シンクレアが参加。このアルバムでの彼の活躍は結構大きいと思う。コンポーザー
としても8曲中5曲にクレジットされている。前2作と大きく違う点は、スタイルこそブリティッシュ・ロック
ではあるが、サウンドはちょっとアメリカンしてみました、という感じかな?後のジャーニーなんかにも
通じるようなサウンドが随所に聞かれる所がちょっと興味が持たれた。‘From Heaven To Hell And
Back Again’なんかの思いっきりポップなロックンロール・サウンドは前には決して聞かれなかったし、
ここからのヒット曲‘She's No Angel’(邦題:悪魔の天使)でのコーラス・ワークも今までには聴かれな
かったような種類のものだった。‘Jackie The Lad’あたりでの演劇じみた語り口調のヴォーカルはホ
ルトンの独壇場とも言えようか。まさしくタイトル通りのキッチュな曲が揃った、キッチュなバンドであっ
たと言える。こんなバンドがいた70年代のロック・シーンはホントに凄いなとつくづく思った次第です。




(‘Heavy Metal Kids’‘Anvil Chorus’の画像・音源ともにHINEさん提供)