MOTT THE HOOPLE
(モット・ザ・フープル)


1969年デビュー。今では(当時もそうであったが)グラム・ロックの部類に入れられて語られる
ことの多いバンドであったが、私は全然そうは思わなかった。確かに当時のコンサート衣装な
どを見るとド派手なものもあったが、音楽自体はピュアなロックン・ロールを演っていたと思って
いる。イアン・ハンターのカリスマ性ばかりが取り上げられ、また、彼等の本当にやりたかった
音楽がレコードという形になった時に、上手く表現しきれていなかった、そしてプレス等に正当
に評価されなかった悲運のバンドとのイメージを私は強く持っいる。
しかしながら近年、彼等の当時未発表だったライヴが数種CD化されたり、日本のバンドによる
トリビュート・アルバムが出たりと、時代が正当に彼らを評価し始めたことは実に喜ばしい出来
事である。
そんな彼等のわずか5年余りの歴史の中から私の所有しているアルバムを紹介したい。



THE BEST OF

(1969-1972)
アイランド・レーベル時代に発表した4枚のアルバムからとシングルのみで発表
されていた曲、そして未発表曲からなるベスト。後にポール・ロジャースとバッド・
カンパニーを結成するミック・ラルフスのギターがやはり良いのである。ブルー
ス・フィーリング溢れるロックン・ロールをメインとしながらも、イアン・ハンターの
圧倒的な存在感を示すようなバラードも素晴らしい出来で、バンドのオーディシ
ョンでボブ・ディランの曲を歌ったというエピソードは有名である。後にそのライ
ヴ・パフォーマンスが『過激・ヴァイオレンス』と言われる要因となった発端も随
所に垣間見れる。世間的にはこのアイランド時代は評価が低いのであるが、
個人的には‘Rock'n' Roll Queen’‘Walkin' With A Mountain’‘Midnight Lady
The Moon Upstairs’‘Death May Be Your Santa Claus’‘Growing Man Blues
などのシンプルなロックン・ロールは気に入っており、ミック・ラルフスのギターも
小気味良いリフ連発でイアン・ハンターのヘタクソVo.を上手くカバーしておりま
す。
ALL THE
YOUNG DUEDES

(1972)
デビッド・ボウイのプロデュースによって、一時は解散寸前までいったバンドは
見事に甦った。タイトル曲‘All The Young Duedes’(ボウイ作)は一気にバンドの
名を世間に知らしめた名作と言える。が、当時の私の印象はというと、軟弱なロ
ックに他ならなかった、というのが正直なところであった。でもさすが今聴くと何
か胸にジーンとくるメロディーを持った不思議な曲である。アルバム冒頭の、ル
ー・リードのカヴァー曲‘Sweet Jane’での音の軽さが妙に引っかかるところでは
あるが、バンドが生まれ変わった事を知るにはうってつけの選曲といえる。ここ
ら辺でのボウイの手腕はさすがと言いたい。個人的にはストレートなロックン・ロ
ール‘Jerkin' Crocus’‘One Of The Boys’といったナンバーが好きだ。後にフ
リーのVO.ポール・ロジャースと結成したバンドBAD COMPANYのファースト・ア
ルバムでも演っていた‘Ready For Love’はここではミック・ラルフスがリード・ヴ
ォーカルをとっていて、バドカン・バージョンと聴き比べてみると面白いかも。
邦題は『すべての若き野郎ども』で、UKチャート21位。
MOTT

(1973)
前作と比べると音造りが分厚く、タイトな仕上りをみせている。セルフ・プロデュ
ースであるが、本当はロイ・ウッドに頼む予定のアルバムだったらしい。全編で
イアン・ハンターのピアノと共に、‘All The Way From Memphis’‘Honaloochie
Boogie’でフィーチャーされているロキシー・ミュージックのアンディ・マッケイの
サックス・プレイが素晴らしい出来映えである。後にアンディ・テイラーもカヴァー
したモット・クラシックとも言うべきヘヴィーな作品‘Violence’、モット風ロックン・
ロール‘Drivin' Sister’など、どれもが初期に戻ったようなストレートなギター・サ
ウンドを核とした中で異彩を放っているのはラルフス作の(リードVo.も彼)‘I'm
A Cadillac’だろう。そのアメリカナイズドされたような音作りは、イアン・ハンター
と衝突し、また、彼の作品が取り上げられない苛立ちからこのアルバムを最期
に脱退することになるのである。 邦題は『革命』で、UKチャート7位。
THE HOOPLE

(1974)
内容的には前作を踏襲している作品。アルバム冒頭を飾る‘The Golden Age
Of Rock 'N' Roll’でのイアン・ハンターの調子っぱずれに聞こえるVo.は何度
聴いても耳に残るナンバーだ。ホーン・セクション、女性コーラスも入った豪華
絢爛なこの曲の音はさしずめフィル・スペクターのハード・ロック版とも言うべき
か。尚、ここでのギターはエリアル・ベンダー、Key.はモーガン・フィッシャーと
なっている。エリアル・ベンダーのギターはこのバンドに煌びやかなイメージを
もたらし、‘Crash Street Kidds’‘Born Late '58’などのナンバーで幾分グラム
チックなサウンドをもたらす事に成功している。また‘Roll Away The Stone’の
間奏ではかのリンジー・ディ・ポールのキュートなヴォイスが聴けるのもこれまた
喜びひとしおである。全米トップ30を果たしたアルバムでバンドのピーク時でも
あった。 邦題は『ロックン・ロール黄金時代』で、ジャケットと共にNiceな一枚で
UKチャート11位、USチャートも28位となる。
LIVE

(1974)
冒頭でも書いた通り、近年MOTTのライヴ音源が数種CD化されているが、私が
現在所有しているのはこの一枚だけ。それまでシングルB面にしか収録されて
いなかった‘Rest In Peace’‘Rose’等のライヴ・バージョンが聞けるのは嬉しい
が、それでも選曲には不満が残るライヴ・アルバムだ。‘All The Young Dudes
Walking With A Mountain’‘Sweet Angeline’等のナンバーではエリアル・ベン
ダーのギターも中々聴かせてくれ、スタジオ・テイクと比べると良い出来だと思い
ます。元来シングル・ヒットが少ないバンドであった為、盛り上がる個所が少な
いのが苦しいところであります。ラストの‘Jerkin' Crocus’から始まる15分にも
及ぶメドレーがやっぱり一番の聞かせどころで、このバンドの最もピュアな面を
見れる部分だと思うのだけど、やはりライヴ盤一枚モノはどうも中途半端で消
化不良気味であります。UKチャート32位、USチャート23位となり、この頃のアメ
リカでの人気の程が伺える。

DRIVE ON

(1975)
こちらはイアン・ハンターとエリアル・ベンダーがバンドを抜けた後に残った3人が
オーディションでVo.とGの二人を入れて発表した新生MOTTのアルバム。全くの
新バンドとも言って良い程、バンドの音、その方向性ともに変わった。新メンバ
ーのナイジェル・ベンジャミンの甲高いVo.は好き嫌いがはっきりと分かれるとこ
ろかもしれないが、イアン・ハンターがいた頃にはなかったスピーディーな曲展開
とキャッチーなポップ溢れるメロディーは中々捨てがたいところだ。これといった
一曲が見当たらないのがこのバンドの印象を薄いものにしてしまっているが、強
いて言えば‘Love Now’のような3分位のノリの良い曲に好感が持てるといった
ところか。曲作りはドラムのデイル・グリフィンとベースのオーヴァレンド・ワッツ
の二人が頑張っているが、典型的なB級バンドのそれと言えます。
SHOUTING AND
POINTING

(1976)
こちらは共同プロデューサーにエディー・クレイマーを迎え、ソリッドなロックン・ロ
ールを聴かせてくれているセカンド。チャート・インこそしなかったものの、そのサ
ウンドは前作とは比べものにならないほど厚みを増し、モーガン・フィッシャーの
Key.、ピアノが大胆な使われ方をしている所が注目すべき点と言える。曲作りに
はメンバー全員が参加していて、なかでも‘Shounting And Pointing’‘Storm
Hold On,You're Crazy’といったナンバーが、これぞ正統派ブリティッシュ・ハ
ード・ロック・サウンドといった曲で必聴曲である。他にはモット・ザ・フープル時代
にはなかった明るいホンキー・トンク調のロックン・ロール‘Too Short Arms’など
も面白く、B級バンドの醍醐味を味あわせてくれる一枚だ。
この後、彼らは再度Vo.を新メンバーに入れ替え『ブリティッシュ・ライオンズ』と
いうバンド名にて2枚のアルバムを残している。