Linda Ronstadt (リンダ・ロンシュタット)


ロス(L.A.)の歌姫ことリンダ・ロンシュタット、私が彼女の歌に初めて触れたのは確か1975年の全米No.1ヒットの
「You're No Good」(邦題:悪いあなた)であったと思う。その時はそんなには意識しなかったけれど、翌年のアルバ
ム「風にさらわれた恋」の頃からはラジオなどでも頻繁に彼女の様々な曲を耳にするようになってフェイヴァリットな
女性Vo.の一人となった。バラードも良いけれどパンチの効いた高音が良く通るロックン・ロール・ナンバーでの声も
好きだったし、なによりもアルバムに置ける選曲の妙が素晴らしかった。それは取りも直さず、彼女の生みの親とも
言えるであろうプロデューサーのピーター・アッシャーによるところも大きかったと思う。そして、やっぱりバックを務
めるミュージシャン達の素晴らしいことはこの上なく、デビュー前のイーグルスのメンバーが彼女のバック・メンバー
であったことは特に有名なエピソードだ。
幅広いジャンルの音楽にトライし、その全てに置いて素晴らしい歌声を披露して今でも第一線で活躍している彼女
は私にとっていつまでも「歌姫」なのである。
ここでは私が一番好きだった時期のアルバム5枚を紹介したい。



Hasten Down
The Wind

(1976)
夕闇の海岸に照らし出されたリンダの、なんとも言えない色気漂うジャケットがこのアルバムの
雰囲気を良く表していると思う。バック・メンバーにはアンドリュー・ゴールド、ケニー・エドワーズ、
ダン・ダグモア、ラス・カンケル、ワディ・ワクテルらの匆々たるメンバーが名を連ねている。ここで
目を引くのがまだデビュー前のカーラ・ボノフのナンバー‘Lose Again’‘Someone To Lay Down
Beside Me’など3曲も取り上げている点。当の本人もバック・コーラスに参加しているし、後のブ
リンドルのメンバーが全員このアルバムに参加している事も考えると人脈的に面白い。特にアル
バムの冒頭とラストの曲が上記の2曲のバラードというのも、このアルバムを良く表現している。
バディ・ホリーのカヴァー‘That'll Be The Day’でのアンドリュー・ゴールドとワディ・ワクテルのツ
イン・ギターは何度聴いても胸躍るし、90年代になってメキシコ音楽をスペイン語で歌ったアルバ
ムを発表したが、ここでも‘Lo Siento Mi Vida’というリンダ作の素晴らしい曲を歌い上げている。
同年発表のウォーレン・ジヴォン作でアルバム・タイトルにもなった‘Hasten Down The Wind’や
アンドリュー・ゴールドとリンダの競作ナンバー‘Try Me Again’など切々と歌いかけるバラード・
ナンバーが光るアルバムだ。
邦題は「風にさらわれた恋」。
Simple Dreams

(1977)
ここでもリンダのアイドルの一人バディ・ホリーの‘It's So Easy’やウォーレン・ジヴォンの‘Poor
Poor Pitiful Me’、ストーンズの‘Tumbling Dice’と言ったロック色の濃いナンバーをカヴァー。
その選曲のセンスの良さもさることながら、ここではワディ・ワクテルのギターが光る。キース・リ
チャードをフェイヴァリット・ギタリストに挙げる彼のギターに注目したい。このアルバムでは前作
まで参加していたアンドリュー・ゴールドが去って、ワディへの負担が大きくなったかも知れない
が、そのダイナミックなギター・プレイはややもするとちょっと地味目なこのアルバムにピリッとし
香辛料的な役割を果たしていると思う。上記3曲に挟まれるロイ・オービソンの‘Blue Bayou’や
J・D・サウザーの‘Simple Man,Simple Dream’、ワディ・ワクテル作の‘Maybe I'm Right’など
のバラード・ナンバーもまた、絶品なところがやはり非凡なアルバムと言える。
邦題は「夢はひとつだけ」。
Living In The
U.S.A.

(1978)
ショート・カーリーヘアーのリンダにはかなりビックリしてしまったアルバム・ジャケット。可憐な乙
女のイメージの彼女がローラー・スケート履いた姿は当時はいまいちピンとはこなかったが。
しかし、中身は極上のアメリカン・ポップスのラインナップで、チャック・ベリーの‘Back In The
U.S.A.’で幕を開けるところがなんとも嬉しく、相変わらずワディのギターとここではドン・グローニ
ックのピアノがご機嫌だ。ロッドの「Smiler」といい、チャック・ベリーでオープニングを飾るアルバ
ムはどれも素晴らしい。エルヴィス・コステロの‘Alison’、J・D・サウザーの‘White Rhythm &
Blues’、リトル・フィートの‘All That You Dream’やモータウンのヒット曲‘Ooh Baby Baby’など
その選曲のセンスの良さは相変わらずで、様々なリンダの声が楽しめる。極めつけはアルバム・
ラストを飾るプレスリーのカヴァー‘Love Me Tender’で、チャック・ベリーで始まりプレスリーで終
るという構成が、聴き終えた後にアメリカン・ポップスのエッセンスがぎっしりと詰まった贅沢なア
ルバムとの印象を強く持ってしまう。
邦題は「ミス・アメリカ」。
Mad Love

(1980)
折りしも時代はニュー・ウェイヴ真っ只中。エルヴィス・コステロの曲を3曲も取り上げたり、売り出
し中のバンド、クリトーンズのギタリストのマーク・ゴールデンバーグの参加が話題になった。
前作以降カントリー・タッチの曲がかなり少なくなってしまい、ここでは力強い女性のイメージを演
出している。シングル第一弾となった‘How Do I Make You’やアルバム・タイトル曲‘Mad Love
この時期彼女の一番のお気に入りのエルヴィス・コステロの3曲のカヴァー曲などニュー・ウェイ
ヴ感覚を上手く取り入れ、リンダの歌い方もそれ風に成りきっているところが素晴らしい。
とは言うものの、ホリーズの‘I Can't Let Go’やオールディーズ・ナンバー‘Hurt So Bad’ニール
・ヤングの‘Look Out For My Love’のカヴァー群が、このアルバムの中では一際目立つ存在で
私はそちらのほうにリンダの魅力をなんとなく感じてしまう。
邦題は「激愛」。モノクロの写真にピンクの「L」と「R」の文字が映えるジャケットだった。
Get Closer

(1982)
発表当時、このアルバムはそんなには話題に上がらなかった記憶がある。印象としては地味目
なアルバムと映った。ジャケットも今までと比べてあまりセンスが良いとは言えない。
などと、あまり好意的なことを述べていないが、曲のバラエティとしては他のアルバムに決して
引けは取っていない。バックの演奏陣もワディ・ワクテルやアンドリュー・ゴールド、ダニー・コーチ
マー、ラス・カンケル、ケニー・エドワーズらの布陣がカム・バックしてリンダの円熟味のあるVo.を
支える。ここでもオールディーズのカヴァーが秀逸でビル・ペインのピアノが素晴らしい‘People
Gonna Talk’、ジェイムス・テイラーとのデュエット・ナンバー‘I Think It's Gonna Work Out Fine
などが聴いていて実に楽しい。J・Tに女性とデュエット曲歌わせたら右に出る者はいないかも^^;
また、アルバム最後の2曲をJ・D・サウザーとのデェット曲‘Sometimes You Just Can't Win’、
ドリー・パートン、エミルー・ハリスとの競演‘My Blue Tears’でシットリと締めるあたりもお洒落
で、聴き終えて妙にホッとした安堵感が漂うアルバムである。


2003/10/05UP